製品の音の確定について

Vivieさんというエフェクターブランドがあります。

独自のアプローチで最近話題で、プロの方にも認められているメーカーさんです。

とある方が、「Vivieが嫌いなわけではないがVivieの音は好きじゃない」という書き込みをSNSでされました。

気づいたVivieのスタッフさんが、「好きじゃないのは仕方ない。音には正解がないからそれでいい。自分たちは一人でも多くの方にいいと言ってもらえるように頑張るだけ」と返信されていました。

僕もそうだと思います。

関連して、思うことが以前からあって、いい機会なのでここで書きたいと思います。

思うこと、というのは、

「結局音作りというのは、回路構成とか使っている部品で決定づけられているのではなくて、それを"確定"する人間の好みで決まる」ということです。

これに気づいたのは、うちのプリアンプは本当にいろんな回路構成とか部品を使っていまして、一般的には大切なファクターだと言われている"オペアンプ"ですら、どれ一つとして共通して使っていないのです。

ですが、ある程度音に詳しい方にチェックして頂いても、

「どれもなんだかんだ言ってPASというかTidemarkというか、つまりは中本さんの音がしますね。」という感想なのです。

もちろん、価格帯がかなり広いので、1万円台のものと、20万円台のものは中身からして全くの別物なのですが、基本的には同じような音質だと言われるのです。

もちろん、音の締りとかS/Nとかレンジとかは高いなりに良くなっていくのですけどね。

これは他のメーカーさんでも同様な現象が起きていると思っていまして、同時期だったら、違う価格帯で出したものであっても基本的には似たような音質に仕上がるのは、責任者の耳がそうさせるのだという想像をしています。

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話は変わりますが、自作界でよくある話で、「〇〇年代のオペアンプは音がいい」「ビンテージのコンデンサは音がいい」などがあります。

これについてもさっきと似たような観点から考えると、

「その時代に手に入った部品で試作して、音を決めたんだから同じ音を出したいならば同じ部品を使えばいい」と思っています。これは配線から、基板から、ケースから、全てを同じにするということで現実的ではないのですが...

逆の見方をしますと、全く違う回路図を書いて、たまたま艶あり4558を使ったらよくなるかといえば、そうでもなくて、艶あり4558を使うと決めて自作しているんだからそれが活かせる定数にしたんでしょ?という考えです。

ビンテージコンデンサについては、経年劣化もあるので一概には言えないですが、基本的には同じ考え方を当てはめれば、「敢えて現代に新しい設計をするときに使うべきものではない」となるわけです。

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PASでもTidemarkでもCrafted by Makoto Nakamotoでも、基本的には僕はいわゆる「オーディオ用抵抗」は使いません。これは、偏見もあるかもしれませんがあの手の部品はすぐディスコンになりがちで、そうなると製品を永続的に作り続けることが出来なくなるからです。

一時期使っていたLME49720などのオペアンプは比較的新しい製品だったのですが、歩留まりが悪かったのでしょうか、生産中止になり、あわせてうちの製品の多くをバージョンアップ又は生産中止に追い込まれました。致し方ありませんが...

かといって、オーディオ用抵抗に負ける製品の品質にしか仕上がらないのかと言うと、皆さんもご存知の通りそんなことはありません。

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話を冒頭に戻します。

「基本的には責任者の耳で音質が決定する」という観点で考えると、このようにいろんな問題が解決していきます。

PASのキット群を辞めた理由の一つには、現在の僕の基準に至らないものが入っていたこともあります。

Vivieさんがおっしゃっている「自分たちは一人でも多くの方にいいと言ってもらえるように頑張るだけ」というのはつまり、僕に置き換えると、「多くの人がいいという音を自分がいいと思える基準を持つ」ということになります。

確固たる基準を持ち、それに満たないならば、たとえ世間が「いい」というものでも「良くない」と言えるようになり、それを自分たちの製品で世間が「こっちのほうがいい」と思えるような製品を生み出していくことが、我々の使命なのではないか、そういう思いを、Vivieさんの書き込みから感じましたので、長文にはなりましたがここに記します。

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